独裁禁止条約をつくろう
先日、ニューズウィークで「『独裁者を任期制』にする国際法を真剣に考える時期にきている」という記事を読んだ。書いたのはカウシク・バス(KAUSHIK BASU)というインド出身の経済学者。
「独裁者は当該国だけの問題ではない。世界中に波紋を広げ、万人の利益に反するからこそ、各国元首の任期を世界統一基準で縛る国際法が必要」というのがその主張の根拠だ。プーチンの起こした戦争を考えてみれば、この主張はもっともだ。独裁者を任期制にする国際法をつくるというのは、良いアイデアだと思う。任期だけでなく、権力の集中についても国際法で制約するべきかもしれない。
もちろん、 これだけで問題を解決できるとは思わない。独裁禁止条約を作ったところで、独裁者たちはそれを批准しないだろうし、批准したところで抜け道をつくってそれに従わないだろう。おとなしくそれに従うような者は、そもそも独裁者になっていないはずだ。
しかし、そうであっても独裁禁止条約が存在すれば、独裁を批判する根拠となるはずだ。そこに独裁という悪があるのだということに当事国の民衆が気づくのを手助けする役割も期待できるだろう。また、こちらのほうが現実的だろうが、民主制が独裁制に転落することを防ぐ効果が期待できるだろう。国際条約の存在は、独裁に対して国際社会が介入するための根拠ともなる。
ひとたび独裁制に転落したら、方向転換して民主制に戻るのは容易なことではない。民主的な方向転換が不可能になってしまうからだ。独裁者の慈悲にすがるか、あるいは暴力的に独裁政権を打ち倒すしかなくなる。それに大きな犠牲が伴うことは、ミャンマーの内戦などを見るまでもなく明らかだろう。